Cortiとは?救急通報と診察の会話を記録と確認に生かすデンマークの医療AI

救急通報の受付や診察では、限られた時間で必要な情報を聞き取り、記録に残す負担があります。デンマークのCortiは、医療の会話を文字に起こし、記録の下書きや聞き漏れの確認に使うAIをAPIで提供しています。

救急通報を受ける担当者や、診察する医師と看護師は、限られた時間で必要な情報を聞き取り、それを記録に残さなければなりません。 デンマークのCortiは、医療の会話を文字に起こし、記録の下書き作成や聞き漏れの確認に使うAIを、電子カルテ事業者などにAPIで提供しています。

国:デンマーク。 情報確認日:2026年11月1日。 同社は公式発表で、コペンハーゲンに本社を置き、ニューヨークとロンドンにも拠点があると説明しています。

通報受付と診察の現場にある課題

スウェーデンで全国の緊急通報を担うSOS Alarmについて、Cortiは2024年11月公開の導入事例を出しています。 そこでは課題として、通報受付担当者がプロトコルを守っているかを確かめる方法がないことを挙げています。 同じ事例では、人口の増加と人手不足が重なり、通報受付担当者をプロトコルの案内で支える必要が強まっていたとしています。 英国での提携の公式発表によると、NHSの組織は、医療者の事務負担を減らす方法として、診察の会話を記録するAIを検討しています。

Cortiの製品とAIの役割

製品・機能 使う人 AIへの入力 AIの出力 人が確認する工程
音声認識API 製品を開発する事業者 口述や診察の音声 構造化された文字起こし 事業者の製品の中で医療者が利用する
文章生成API 製品を開発する事業者 文字起こし、事実、構造化データ SOAP記録、退院サマリー、紹介状など 医療者が下書きを確認、修正し、署名する
トリアージ用エージェントの雛形 トリアージ担当の看護師 質問票と会話の文字起こし 構造化データと不足項目の報告 看護師が足りない情報を聞き取る

救急通報で担ってきた役割

SOS Alarmの導入事例では、2022年以降の運用データと現在の通報の対話を構造化し、プロトコルの弱点を分析したと説明しています。 その分析を基に質問を追加・削除し、試験利用者を対象にしたA/Bテストで変更の効果を確かめたとしています。 同社の研究一覧には、医療相談電話で脳卒中を見分ける作業を機械学習で支援する後ろ向き研究も載っています。

一方、現在の公式サイトが用途別に挙げるソリューションは、電子カルテ事業者、遠隔診療、診療所の管理システム、患者対応の4つです。 救急通報向けの製品は含まれていません。 確認した資料からは、救急通報向けの仕組みを今も新しく導入できるかは分かりませんでした。

診察の会話から記録を作る機能

音声認識APIは、リアルタイムの口述、診察中の会話からの記録、録音済み音声のまとめ処理に対応し、構造化された文字起こしを返します。 公式サイトによると、約50言語に対応しています。 文章生成APIは、文字起こしや事実、構造化データを基に、SOAP形式の記録、退院サマリー、フォローアップの手紙などを作ります。 同じページでは、診察が終わった直後に下書きを生成し、医療者がそれを確認・修正して署名する流れを示しています。 1回の診察から、電子カルテ用の記録、患者向けの要約、請求用の報告書を別々に作ることもできます。 対応言語の例には、英語、デンマーク語、スペイン語、ドイツ語、フランス語、スウェーデン語が挙がっています。

診察の会話から記録の下書きを作るという点では、Abridgeと同じ業務を扱っています。 ただしCortiは、医療機関向けの完成品よりも、電子カルテ事業者などが自社製品に組み込むAPIを中心に提供しています(公式サイト)。

看護師の電話トリアージを確認するエージェント

Cortiは、業務に合わせて調整するエージェントの雛形(Agent Blueprint)を公式サイトで公開しています。 そのうちトリアージと初期評価のエージェントは、トリアージを担当する看護師の判断支援として設計されています。 入力には、分岐の条件や判定ルールを含む質問票と、看護師と患者の会話の文字起こしを使います。 エージェントは、会話から臨床情報を取り出して質問票の項目に当てはめ、必須項目の不足などを報告して、看護師に追加の聞き取りを促します。 同じページでは、エージェントが患者に直接聞き取りをせず、情報がそろわない段階で最終的な緊急度を決めず、臨床判断にも優先しないことを明記しています。 想定される使い方には、看護師が対応する電話相談の会話に、必要な質問がそろっているかを確かめる作業が含まれています。

欧州での提供例

2026年10月15日の公式発表によると、英国のDiktamenは、口述記録用のクラウド基盤にCortiのAIを組み込みました。 これにより、NHSトラスト、民間病院、診療所、一般診療所に、診察の会話から記録を作る機能を提供します。 医療者は、口述、音声認識、会話からの記録作成のうち、使い慣れた方法を選べます。 2026年10月22日の公式発表では、Dedalusが電子カルテORBIS向けの「ORBIS Buddy」を、Cortiのエージェント基盤と音声技術を使って作ったと説明しています。 ORBIS Buddyは、まずドイツ語圏で導入され、その後ほかの欧州の国に広げる予定です。 同じ発表では、各工程を医師が確認する仕組みだと説明しています。

提供形態

公式サイトによると、利用者は電子カルテ事業者、診療所の管理システム、遠隔診療などの事業者で、口述記録、診察の会話からの記録作成、医療コード付けを自社製品に組み込めます。 データの保管場所は、EUか米国のホスティング、提携クラウド、自社設備から選べます。 同じページで、顧客のデータを汎用モデルの学習には使わないとしています。

日本の事業者や医療機関から見る確認点

ここからはgennaiの見立てです。 文章生成APIのページが挙げる言語の例に、日本語は含まれていません。 日本語の診察会話でどの程度正しく記録できるかは、自院の音声で確かめる必要があると考えます。 確認した資料では、医療機器としての承認状況も分かりませんでした。 診断や緊急度の判定に関わる使い方を考える場合は、提供元と国内の規制上の扱いを先に確認する必要があります。

評価の際に測りたいのは、次の2点です。 診察の記録では、下書きができるまでの時間だけでなく、医療者が確認・修正にかける時間も測ると、実際の負担の変化が分かりやすくなります。 電話トリアージでは、必須の質問の聞き漏れがどれだけ減るか、重要な情報を聞き出すまでの時間がどう変わるかを測ると、AIの提案が現場に合っているかを判断しやすくなります。