AKASAとは?入院カルテから請求用コードを付ける米国の医療AI企業
米国の病院では、退院した患者のカルテを読んで診断や処置を請求用のコードに置き換える作業が、今も大半は手作業です。AKASAは、カルテを読み込んでコードを提案したり付けたりする生成AIを、病院のコーダーや文書改善の担当者に提供しています。
米国の病院では、退院した患者のカルテを読んで、診断や処置を請求用のコードに置き換える作業の大半が、今も手作業です(公式発表)。 AKASAは、カルテを読み込んでコードを提案したり付けたりする生成AIを、病院の医療コーダーや臨床文書改善(CDI)の担当者に提供しています(会社概要)。 同社は、コード付けにかかる時間と、退院してから請求できるまでの待ち時間を短くすることを目指しています(製品ページ)。
国:米国。 情報確認日:2026年11月1日。 2026年10月2日の公式発表は、カリフォルニア州サウスサンフランシスコから出されています。 設立年は、確認した公式資料には書かれていませんでした。
AKASAが扱う病院の請求業務
公式発表によると、カルテの記録を、診療報酬の請求、品質の報告、リスク調整に使うコードへ置き換える工程があります。 同社はこの工程を「ミッドサイクル」と呼んでいます。 同社はこの工程を、複雑で手間がかかり、今も大半を手作業で行っている業務だと説明しています。 同じ発表では、コーダーが入院1件のコードを付けるのに通常30〜60分かかると述べています。 コーダーの不足から、退院後に作業が始まるまで数日待つ場合があるとも述べています。 会社概要では、事業として次の2つを挙げています。 収益サイクル(請求と入金までの一連の業務)の担当者を支えるAIアシスタントと、生成AIによる複雑な業務の自動化です。 同社は、医療機関ごとのカルテ、症例の構成、過去のコード付けの判断を使い、AIモデルを個別に調整していると公式発表で説明しています。
診察の会話から記録の下書きを作るAbridgeは、記録を作る段階を扱います。 AKASAが扱うのは、できあがった記録を請求用のコードに置き換え、記録の不足を探す段階です。
| 製品 | 主に使う人 | AIへの入力 | AIの出力 | 人の関わり方 |
|---|---|---|---|---|
| 自律型の入院コーディング | 医療コーダー、コーディング部門の責任者 | 退院時サマリー、手術記録、経過記録、検査、画像、投薬などカルテ全体 | 入院1件分のコード一式と、各コードの根拠になる記述・理由・確信度 | 病院が対象範囲としきい値、監査用の抽出を設定する |
| Coding Optimizer | 医療コーダー | コード付けを終えた入院症例と関連文書 | 見落とした可能性のあるコードの提案(根拠と確信度付き) | コーダーが提案を確かめて承認する |
| CDI Optimizer | CDI担当者 | 検査値、バイタル、投薬、文書 | 記録に不足がありそうな症例を優先順に示す | CDI担当者が根拠を確かめ、医師などに問い合わせる |
| Auth Status | 事前承認を扱う担当者 | 保険会社のポータルにある申請状況 | 状況の解釈と記録 | 同社の専門スタッフが関わる方式 |
自律型の入院コーディング
AKASAは2026年10月2日の公式発表で、入院のコード付けとCDIを対象にした自律型AIの提供開始を発表しました。 製品ページによると、AIはカルテ全体を読み、診療科を問わず入院症例のコードを単独で付けます。 読む対象には、退院時サマリー、手術記録、経過記録、他科への相談記録、検査、画像、投薬を挙げています。 付けたコードにはそれぞれ、根拠になるカルテの記述、理由、確信度がひも付けられます。 公式発表では、人の介入なしにコード付けを終えられるよう設計していると説明しています。 病院側は、しきい値、診療部門ごとのルール、保険会社の構成、監査のための抽出を決めます。 AIは承認された範囲だけでコードを付けると製品ページで説明しています。 gennaiの見立てでは、この製品で人が関わるのは、1件ごとの承認ではなく、任せる範囲の設定と抽出監査です。 外来で病院側が請求する症例への対応は、近く追加する予定だと公式発表で案内しています。
性能について同社は、第三者による盲検評価の結果を示しています。 この評価では、AIと熟練コーダーが同じ入院症例にコードを付け、どちらの結果かを知らない審査者が比べました(製品ページ)。 対象は、多くの医療機関で入院件数の65〜85%を占める症例区分です。 主診断、MS-DRG、入院時に既にあった病名(POA)、品質指標の把握などの項目で、AIは人と同等かそれ以上だったと同社は発表しています(公式発表)。 評価した件数や詳しい手順は、確認した資料には書かれていませんでした。 退院後90秒未満でコード付けを終えられるという点も、企業側の説明です(公式発表)。
Coding Optimizer
製品ページによると、Coding Optimizerは、コード付けを終えた入院症例と関連文書を生成AIで見直します。 そのうえで、取りこぼした請求、品質指標、支払いを拒否されるリスク、規則違反のリスクを探す製品です。 提案には、臨床的な根拠、コードの規則の参照、確信度が付きます。 コーダーは、提案の理由とカルテから直接引いた文を見て内容を確かめ、コードを承認します。 2024年6月18日の公式発表では、コーダー向けの生成AIアシスタント「AKASA Medical Coding」を発表しました。 推奨されたコードを、コーダーが受け入れるか修正する流れを説明しています。
CDI Optimizer
製品ページによると、CDI Optimizerは、退院後で請求前の入院症例を生成AIで見直します。 見直しでは、検査値、バイタル、投薬、文書をまとめて読みます。 記録の不足と、それが品質、規則の順守、収入に与えうる影響を分析し、確信度が高く影響の大きい症例をダッシュボードに示します。 CDI担当者は、診断ごとに時系列で整理された臨床的な根拠を見て、提案を確かめます。 そのうえで医師などに問い合わせ、回答を追い、承認された提案で症例の記録を更新します。
Auth Status
製品ページによると、Auth Statusは、保険会社のポータルで保留中の事前承認の状況を確かめ、結果を解釈して記録します。 同社は、AIによる自動化に専門スタッフが加わる「expert-in-the-loop」の方式だと説明しています。
導入事例と提供条件
公式発表では、Cleveland Clinicの事例を紹介しています。 同院は、コーディングとCDIの請求前レビュー製品を使っています。 今後は自律型の仕組みも同社と検討する意向です。 同じ発表で同社は、顧客の医療機関について、患者からの純収益の合計が1,800億ドルを超え、米国の入院の退院件数の約1割にあたると説明しています。 これは2026年10月時点の企業側の説明です。 2024年の公式発表では、HIPAAに準拠し、HITRUSTとSOC 2の認証を受けていると説明しています。 製品ページでは、病院で使っている電子カルテや請求システムと並行して使えるとしています。 確認した公式資料には、料金の具体的な内容は書かれていませんでした。 医療機器としての承認も、確認した公式資料には見当たりませんでした。 対象は診断ではなく、請求に使う記録とコードの業務です。
日本の医療機関から見る導入条件
製品ページでは、ICD-10-CM/PCS(米国で使う診断・処置のコード体系)が組み込まれていると説明しています。 公式発表で示す評価項目は、MS-DRG(米国公的保険の入院の支払い区分)などです。 日本語のカルテや日本の診療報酬の仕組みに対応するかは、確認した資料では分かりませんでした。
gennaiの見立てでは、評価する際は、次の項目を導入前後で比べると効果を判断しやすくなります。 - 入院1件あたりのコード付けにかかる時間 - 退院からコードが確定するまでの日数 - 抽出監査で修正が必要になった割合 - 保険会社に支払いを拒否された件数
自律型を検討するなら、どの症例区分をAIに任せ、何割を人が監査するかを先に決めておく必要があります。 製品ページのよくある質問には、自律的に付けたコードを修正する必要がある場合の扱いが質問として挙がっています。 誤ったコードが請求に出たときの修正手順と責任の分担は、契約前に確かめておくべき点です。