Ambience Healthcareとは?診療記録とコーディングを支える米国医療AI

米国の医療機関では、医師が書く診療記録が、診療報酬を請求するコードの根拠になります。Ambience Healthcareは、診察の会話やカルテから記録の下書きと請求コードの候補を作り、医師の確認につなげるAIを提供しています。

米国の医療機関では、医師が書く診療記録が、診療報酬を請求するコードの根拠になると、同社は事業部門向けページで説明しています。 Ambience Healthcareは、診察の会話やカルテから記録の下書きと請求コードの候補を作り、医師の確認につなげるAIを提供しています。 同社は公式発表で、診察の場でコードまで扱うことにより、医師とコーディング・請求部門の間で時間のかかる問い合わせのやり取りをなくすと主張しています。

対象は、外来・救急・入院で記録を書く医師と、その記録をもとにコーディングや診療記録改善(CDI)を担う部門です。 公式発表では、医師向けには記録作業の自動化、管理部門向けにはコーディング、品質管理、CDIなどの業務の標準化を掲げています。

国:米国。 情報確認日:2026年11月1日。 同社は公式発表で、2020年にMike Ng氏とNikhil Buduma氏が創業し、サンフランシスコに本社を置くと説明しています。 2026年4月の公式発表では、Buduma氏を共同創業者兼CEO、Ng氏を共同創業者兼Presidentとして紹介しています。

外来の診察から請求コードまでの工程

公式発表によると、医師は端末で録音を始めて通常どおり診察し、ICD-10とCPTのコード候補が付いた記録の下書きを確認します。 同じ公式発表では、診察内容からICD-10コードを特定するモデルの出力を記録作成AIに渡し、そのコードを先に踏まえて記録を生成すると説明しています。 医師が確認して署名した後、コード付きの記録はEpic、Oracle Cerner、athenahealthなどの電子カルテに自動で戻されると、同じ公式発表に記されています。

場面 AIの入力 AIの出力 人の作業
診察中 診察の会話 構造化された記録の下書き 医師が患者を診察する
診察後 診察の内容と記録 ICD-10・CPTなどのコード候補 医師が記録とコードを確認する
署名後 医師が確認した記録 電子カルテへの書き戻し 医師が署名する

医療者向けページでは、記録作成機能のAmbient Scribeが、複数の話者とリアルタイム翻訳に対応すると案内しています。 同じ医療者向けページでは、健康診断の受診中に新たな急性の問題が出てきた場合に追加のE/Mコードを提案するModifier 25 Advisorや、適切なE/Mレベルを示すE/M Code Advisorを紹介しています。 HCC Compliance Validatorは、HCCに関係する診断のうち記載の裏付けが不足しているものを、記録の作成中に知らせる機能として医療者向けページで説明されています。 事業部門向けページでは、ICD-10、CPT、HCC、E/Mの最新のガイドラインと診療科ごとのコーディング規則を適用するCoding & Compliance Engineを説明しています。 同じ事業部門向けページのImpact Analytics Dashboardでは、医師、診療科、施設ごとに、コード捕捉の増加や受診1件あたりの収益を確認できるとしています。

例えば、禁煙指導のような見落とされやすい請求対象をAIが候補に挙げた場合でも、診察で実際に行った内容と合うかを判断するのは署名する医師です。 gennaiの見立てでは、コード候補の採用率だけでなく、医師が候補を修正・却下した件数と、署名後にコーディング部門から届く問い合わせの件数を合わせて測ると、確認作業の負担が見えやすくなります。

入院診療では会話よりカルテ全体を読む

2026年5月の公式ブログで同社は、入院の診療の約半数では、会話をもとにした記録が当てはまらないと説明しています。 患者が鎮静中であったり、確かな病歴を話せなかったりする場合があるためだと、同じ公式ブログは述べています。 同社は、入院で臨床的に重要な診断の70%は会話の文字起こしに手がかりがないという自社の分析結果を、同じ公式ブログで示しています。 そのためAmbienceは、検査値、バイタル、投薬の変更、画像、オーダー、過去の記録を読み込んで推論すると、公式ブログで説明しています。

機能 AIの出力
Patient Summary 病室に入る前に把握するための、患者の長期の経過の要約
H&P Notes ベッドサイドの会話とカルテのデータからの入院時記録
Diagnoses 見落とされた病態と、根拠付きのICD-10コード
Progress Notes 前日の記録、当日の会話、最新のカルテデータからの経過記録
Discharge Summary 入院期間全体からの退院時要約

2025年11月の公式発表で紹介されたConditions Advisorは、他院の記録を含む患者の記録全体を分析し、見落とされている可能性のある診断を裏付ける所見を示します。 同じ公式発表では、がん患者の進行性の体重減少から悪液質の可能性を示す例を挙げています。 二次的な病態を評価し治療する判断の権限は医師に残ると、同じ公式発表は説明しています。 同社は、4つの医療機関での評価で、カルテを読み込んで作る退院時要約が、それまで欠けていた情報の91%を補ったと公式ブログで述べています。

gennaiの見立てでは、この91%は同社が示した評価結果であり、何を「欠けていた情報」と数えたかを自院の退院時要約で確かめる必要があります。 AIがカルテから診断の候補を出す場合、提示された根拠を医師がたどれるか、確認に何分かかるかも導入判断の材料になります。

コーディング精度の数値の読み方

2025年5月の公式発表で同社は、OpenAIの強化学習によるファインチューニング(RFT)で訓練したモデルが、ICD-10コーディングの精度で医師の基準を相対的に27%上回ったと発表しました。 評価には、複数の診療科にまたがる複雑な症例を集め、4人以上の専門医の合意で正解を付けた自社のテストデータを使ったと、同じ公式発表は説明しています。 比較の相手は、経験のある18人の認定医です(公式発表)。

gennaiの見立てでは、この数値は自社が作った評価データでの相対比較であり、診療科の構成や記録の書き方が違う病院で同じ結果になるとは限りません。 比べた相手が医師であり、専門のコーディング担当者ではない点も、数値を読むときの条件になります。

提供の範囲と会社の動き

医療者向けページでは、外来、入院、救急の各場面で200以上の診療科に対応すると案内しています。 2025年7月の公式発表では、Oak HC/FTとAndreessen Horowitzが共同で主導した2億4,300万ドルのシリーズCの資金調達を発表しました。 同じ公式発表では、Cleveland Clinic、UCSF Health、Houston Methodist、Memorial Hermannなどの米国の医療機関が利用していると紹介しています。 2026年8月の公式発表では、料金を医療機関の成果目標に連動させる契約と、医師やエンジニアのチームを医療機関に置く提供モデル「The Ambience Standard」を発表しました。 同じ公式発表では、各製品の基盤を、医療向けのAIエージェント基盤「Ambience Chorus」と位置づけています。 公式サイトでは、Chorusが食い違いを含むカルテの情報を臨床的な推論で整理し、すべての操作を医師が確認し監査の対象にすると説明しています。

日本の医療機関から見る確認点

同社は公式発表で、北米の医療機関での利用を案内しています。 コーディング機能は、ICD-10、CPT、HCC、E/Mといった米国の請求の仕組みに合わせて事業部門向けページで説明されています。 gennaiの見立てでは、これらのコーディング機能を日本の診療報酬の算定にそのまま当てはめることは難しいと考えられます。 確認した公式資料では、日本での提供予定や日本語への対応は確認できませんでした。 患者向けページでは、複数の言語での診察の聞き取りと、HIPAAへの準拠を案内しています。 日本で使う場合は、日本の個人情報の規則への対応と、音声や生成文書の保存先を別に確かめる必要があります。 確認した公式資料では医療機器としての承認に関する記載は見当たらず、同社は記録とコーディングの支援として製品を説明しています。

診察の会話から記録を作る点では、Abridgeと比べることができます。 Ambienceは、記録と同時に請求コードの候補と記載の裏付けの確認までを、診察の場で扱うと公式発表で説明しています。

Ambienceを評価する出発点は、医師の記録作業と、コーディング部門からの問い合わせや差し戻しの、どちらに負担が集まっているかです。 記録の下書き時間、コード候補の修正率、署名後の問い合わせ件数を分けて測ると、自院の業務に合うかを判断しやすくなります。