Hippocratic AIとは?患者へ電話をかけ看護師へつなぐ米国の医療AI

病院の看護師や窓口担当者は、退院後の経過確認や検診の案内など、患者への電話を限られた人数でこなしています。米国のHippocratic AIは、患者と音声で会話し、注意が必要な場合は看護師へ引き継ぐAIエージェントを提供しています。

病院の看護師や窓口担当者は、退院後の経過確認、検診の案内、予約の受付など、患者への電話を限られた人数でこなしています。 米国のHippocratic AIは、患者と音声で会話して予約や症状を確認し、注意が必要な場合は看護師へ引き継ぐAIエージェントを、病院や医療保険者向けに提供しています。 電話の件数を増やしつつ、臨床判断は人に残す設計を掲げています。

国:米国。 情報確認日:2026年11月1日。 同社は公式発表で、カリフォルニア州パロアルトを発信地としています。 CEO紹介ページによると、共同創業者でCEOのMunjal Shah氏が2023年に同社を創業しました。

Hippocratic AIが扱う患者への電話業務

製品ページは、職員の手が足りないと、退院後のフォロー、ケアの抜け(推奨される検診などが済んでいない状態)への連絡、検診のリマインドが漏れやすいという課題を挙げています。 そのうえで、患者へ電話をかける業務と電話を受ける業務を、次の3つの領域に分けて説明しています。

領域 AIが行うこと(製品ページの記載)
予約・問い合わせ窓口 着信にすぐ応答し、予約の受付と確認、受診前の問診を行い、時間外も対応する
退院後のフォロー 回復状況の確認電話をかけ、服薬の状況や症状を聞き取り、危険な兆候を見つける
慢性疾患とケアの抜け 定期的な確認電話で、がん検診、予防接種、血圧測定、年1回の健康診断の予約を促す

同社は用途別のエージェントを1,000種類以上そろえていると製品ページで案内しています。 例として、肺炎の退院後の回復支援、大腸がん検診、マンモグラフィ検査の予約などを挙げています。

電話1件の流れと人が確認する工程

製品ページでは、導入後の流れを4段階で説明しています。

  1. 電子カルテ(EHR)や顧客管理システム(CRM)から、退院した患者や検診の時期が来た患者などの対象者を抽出します。
  2. Polaris 5.0を基盤とするエージェントが電話をかけ、患者の言語で会話します。
  3. 危険な兆候があるときや患者が求めたときは、通話中にリアルタイムで人間の看護師へ引き継ぎます。
  4. 通話の結果を医療機関のシステムへ記録し、完了率や服薬の継続などの指標を報告します。

同じページのよくある質問では、英語、スペイン語、中国語(標準中国語)などで会話でき、通話の途中で言語を切り替えられると説明しています。 エージェントは導入先の手順(プロトコル)に従い、通話の結果を記録すると案内しています。 gennaiの整理では、AIの入力は対象者リストと患者の発話で、出力は会話での応答、看護師への引き継ぎ、システムに書き戻す通話結果です。

対象外の範囲も示しています。 同社のエージェントは診断や処方を行わず、ホスピスや精神疾患、2歳未満の子どもには対応しないと製品ページに明記しています。

製品ページの説明に沿うと、例えば肺炎で退院した患者が「息苦しさが強くなった」と話した場合、AIが助言を続けるのではなく、看護師へつなぐ流れになります。 導入を検討する医療機関は、AIがかけた電話の件数に加えて、看護師へ引き継がれた件数と折り返し対応にかかる時間も測ると、看護師の負担が実際に減ったかを判断しやすくなります。

導入例:UHSの退院後フォロー電話

2025年6月16日の公式発表で、米国の病院グループUniversal Health Services(UHS)は、退院した患者への電話フォローにHippocratic AIのエージェントを導入したと発表しました。 最初の導入先は、ラスベガスのSummerlin Hospital Medical Centerと、テキサス州デニソンのTexoma Medical Centerの2病院です。 エージェントは退院後の確認電話をかけ、退院時と服薬の指示を振り返り、新しい症状や悪化した症状を聞き取り、患者の質問に答えます。 同じ発表でSummerlinの看護部長は、患者が特定の質問について折り返しを希望すると、その内容が看護師に届く仕組みを説明しています。 発表では、患者によるAIとの会話の評価は10点満点で平均9.0とされています。 この数値はUHSと同社が発表したもので、第三者が検証した値ではありません。

退院後や慢性疾患の患者に電話で経過を確認するAIは、Tucuviも扱っています。 比べるときは、対応言語、看護師へ引き継ぐ条件、記録の書き戻し先を同じ観点でそろえると違いが見えやすくなります。

基盤モデルPolarisと安全性の確認

2026年4月30日の公式発表で、同社は医療向けモデルの最新版Polaris 5.0を発表しました。 複数の専門モデルを組み合わせた構成で、医薬品名や医療用語向けの独自の音声認識と、薬剤名の発音を安定させる独自の音声合成を組み込んだと説明しています。 新しい機能には、7つの身体系統にわたって緊急性のある症状を分類し、適切な臨床エスカレーションへ振り分ける機能が含まれます。 同じ発表ではOpenAI、Anthropic、Googleのモデルと50以上のベンチマークで比べた結果も示していますが、これは同社自身による評価です。

安全性のページでは、専門モデルの構成、出力テスト、人による臨床監督、看護師へのエスカレーション、実際の通話との照合という5段階の安全確認を示しています。 出力テストでは、米国の免許を持つ臨床家7,700人超を雇い、77.5万件のテスト通話を行ったと説明しています。 一方、製品ページでは同じテストを7,500人超、72.5万件と書いており、ページによって数値が異なります。 導入を検討する際は、どの時点の、どのモデルについての評価なのかを問い合わせて確かめる必要があります。

日本の医療機関から見る導入条件

Polaris 5.0の発表では、米国の医療機関、医療保険者、製薬企業に導入していると説明しています。 対応言語には英語、スペイン語、中国語などが挙げられていますが、確認した資料では日本語に対応しているかは分かりません。 製品ページではHIPAA、HITRUST、SOC 2への対応を掲げていますが、それだけで日本の医療情報の取り扱いルールに合うかは判断できません。 料金は電話の件数と用途によって変わると、同じページのよくある質問で説明しています。

同社は、エージェントの用途を診断や処方を行わない範囲に限ると製品ページで説明しています。 確認した資料には医療機器として承認を受けたという記載はなく、gennaiは患者連絡の業務支援として評価するのが適切だと考えます。

評価の出発点は、看護師や窓口担当者が今どの電話に時間を使い、どの電話をかけきれていないかです。 連絡がついた患者の割合、看護師へ引き継がれた件数と内容、システムへの記録の正確さを分けて測ると、自院の業務に合うかを判断しやすくなります。